二人がじゃれ合っていた頃、自分の手作り料理をスヴェンがしっかりと味わっている様を熱心に観察していたイヴでしたが、少し離れたところに居る二人の騒ぎにふと目を遣り、
(ほうほう…)
と、何かを決心した様子です。

それから暫く、用意した料理を二人で仲良く片づけたところで、別の桜の木の下に居る二人の方を指差し、
「スヴェン、あれ…」
と、問いかけます。
スヴェンはその声と視線と指の先を追い、
「んぉ? あぁ、ありゃ『膝枕』だ。」
とか暢気に答えます。
その言葉を了解したイヴはスヴェンの目を見据えて、
「わたしも『ひざまくら』する。」
と、宣言しました。
「あ? …あ、あぁ、おう、良いぜ。っと、ほれ、ココだ。」
と、戸惑いながらも、スヴェンは組んでいた胡座を崩して両足を伸ばし、左手で反らした上体を支えながら右手で腿を叩きます。
その様子にちょっとだけムッとしながら、
「そうじゃなくて、ッしょっと、スヴェンがココに寝るの。」
と、横座りから両足を伸ばし、伸ばした腿の上を叩きながらイヴは言い直しました。
スヴェンはその様子にウッと戸惑いつつ、
「イヤ、しかしなぁ… その、足がしびれるぞ?…////
とか赤くなりながら反論してみますが、
「大丈夫だから、ほら、ココ、ココ。」
と、ペチペチと小気味いい音を鳴らしながら腿を叩くイヴには逆らえる訳もありません。
そのうえ、酒の所為だけでもなく真っ赤になった顔を帽子で隠しながら
「…じゃ、じゃあ、その、おじゃまします…//////
と、怖ず怖ずと横になろうとするところに、
「ハイ、いらっしゃい
などとニッコリと笑いかけられ、全身ガチガチに緊張している始末。

ゆっくりゆっくり上体を横たえながら、髪の先がイヴの腿に触れた感じにビクッとしつつも、後頭部で感ずる少し芯があるような、それでも柔らかく滑らかなその感触に、何とも言えない安らぎを感じているようです。
スヴェンはしばらくはその心地よい感動に浸っていたのでしょうが、食後と云うこともあり、その安らぎの中にあっさりと意識を手放したようです。
それを見守っていたイヴも
(どうして太股なのに「膝」枕なんだろう??)
などと考えつつ、スヴェンが寝入ったことにとても嬉しそうです。


少し日も傾いた頃やっとシートの方に戻ってきた二人は、弛みきった安らいだ顔で膝枕に眠っている自称『紳士』の姿と、足がしびれているのか苦悶の表情を浮かべながらも、どことなく幸せそうにコックリコックリと船をこいでいる小さな『お姫様』の姿を見るのでした。


著者注:本作は「-SKY SCOPE-」の「水樹」様に貢いだものです。
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後書き